― 私が学び続ける理由 ―
「なんで勉強してるの?」
私が小学生だった頃のことです。
学校から家に帰ると、母が小さな卓上テーブルに向かって座っていました。
机の上には、一冊の漢和辞書。
母は、その辞書の後ろに載っている漢字一覧を見ながら、一文字一文字、静かに漢字の勉強をしていました。
その光景が、子どもの私にはとても不思議でした。
当時の私は、
「勉強は子どもがするもの。」
「大人になれば勉強は終わるもの。」
そう思っていたからです。
だから私は母に聞きました。
「なんで勉強してるの?」
母は手を止めて、穏やかにこう答えました。
「お母さんは中学校までしか出てないから、漢字を勉強してるの。」
母が小学生の頃、日本は終戦を迎えました。
戦後の混乱の中で育ち、家庭の事情もあって、中学校までしか通うことができませんでした。
だから大人になってから、自分で漢字を学び直していたのです。
そのときの私は、
「大人になっても勉強することがあるんだ。」
そんなふうに思ったことを、今でも覚えています。
振り返ると、
私が学び続けるようになった原点は、この母の後ろ姿だったのかもしれません。
高校時代には、仏教の本を夢中になって読んでいました。
「人はなぜ苦しむのか。」
「どうすれば人は幸せに生きられるのか。」
そんな問いに惹かれていたのだと思います。
社会人になってからも、その問いは消えませんでした。
コーチングを学び、カウンセリングを学び、アドラー心理学を学び、Points of You®を学び、心理学やコミュニケーションについて学び続けてきました。
ありがたいことに、その過程でいくつかの資格も取得しました。
でも、資格を取ることが目的だったことは、一度もありません。
資格は、学びの途中でいただいた通過点のようなものです。
私が本当に知りたかったのは、
「人はどうすれば変われるのか。」
ではありませんでした。
もっと知りたかったのは、
「人は本来どんな存在なのか。」
ということでした。
学び続ける中で、私の考えは少しずつ変わっていきました。
以前の私は、
「どうすれば相手を変えられるだろう。」
そんな視点で人を見ていたように思います。
でも今は違います。
人を変える方法を探すよりも、
その人の中に、すでにある力を信じること。
その人自身が、自分の力に気づけるように関わること。
そのほうが、ずっと大切なのだと思うようになりました。
この考え方は、今のSelf2Driveの土台にもなっています。
私は誰かに力を与えたいわけではありません。
人には、本来、自分らしく生きる力がある。
私は、その力を一緒に見つけていく伴走者でありたいと思っています。
母は、私に「学びなさい」と言ったことは一度もありません。
ただ、静かに学び続ける姿を見せてくれました。
子どもは、言葉よりも背中から多くのことを学ぶのかもしれません。
だから私も、誰かに「学び続けなさい」と伝えたいわけではありません。
ただ、自分自身が学び続ける姿を大切にしたい。
そう思っています。
もし今、
「もう歳だから。」
「今さら勉強なんて。」
そんな気持ちがあるとしたら、
私はあの日の母の姿を思い出します。
学ぶことに、遅すぎるということはありません。
学ぶことは、誰かと比べるためではなく、
昨日までの自分より、少しだけ世界を広く見るためのものなのだと思います。
そして、その積み重ねが、
人生を少しずつ豊かにしてくれるのだと思っています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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